障がい者の職業相談窓口での出来事

私(Kumiko)が、ハローワークで障がい者の職業相談を担当していた時のエピソードです。仕事次第で人はこんなに変わるのだと驚きました。
その方は、30代後半の自閉症の男性でした。中学校を卒業して働いていた会社の経営状態が悪くなり、解雇されて母親と一緒にハローワークにやってきました。お話を伺っていると、まじめにコツコツと仕事を続けてこられた様子です。しかし、彼からは働きたいという気持ちややる気があまり伝わってきませんでした。
再就職先を探さないといけないというのはわかっていたと思いますが、どんな会社で働きたいというのも特になく、彼にできそうな仕事の求人を見せてもあまり乗り気ではありません。私一人が一生懸命になって、なんだか空回りしているような感じがしました。


どうしたらやる気になるのだろう…

数か月経った頃から、周りからもせかされたのか、面接に行ってみると言うようになりました。私も何度か面接に同行しましたが、行く途中もダラダラととてもゆっくりと歩き、面接先の会社に着いても、その態度は変わりません。そのため、なかなか就職先が見つかりません。
どんな仕事だったら彼が興味を示すのか、いろいろ試行錯誤してみましたが駄目でした。このままの状態が続くのはよくないため、短期間ですが、外郭団体で職業訓練を受けることになりました。職業訓練中も、言われたことはまじめに行うものの、今一つやる気にかけるというのは変わらなかったそうです。


彼に合った仕事が見つかりました!

職業訓練の一環として、彼は職場実習に行きました。実習先の会社で、彼は再生資源の弁別を行いました。その仕事が彼にあっていたようで、社内の誰よりも熱心に正確に弁別を行っていたそうです。他の社員がいい加減に分けたものを彼が気づいてやり直すので、他の社員にもいい刺激になっていると会社の方から伺いました。自宅から遠い会社で、通勤に1時間以上かかりました。しかも2回も乗り換えが必要です。最初は、たった1回の乗り換えさえ渋っていた彼なのに…。彼にとっては、とても楽しい仕事だったのでしょう。毎日、会社に行くのが待ちきれなかったみたいです。


人ってこんなに変わるんだ!

そして、なんと会社で仲のいい人ができました!いつも昼休みには、その人の隣に座って宅配弁当を食べるようになったそうです。ご家族にその話をすると「信じられない」とおっしゃっていました。他人にほとんど関心を示さない彼は、これまで仲のいい人(友達)は一度もできたことがなかったそうです。他人とかかわりを持つことを覚え始めた彼は、他の人のお弁当のフライに勝手にソースをかけて回って、困ったというエピソードも聞きましたが(笑)
これまで、他人とかかわりを持ってこなかったのだから、無理はありません。一から対人関係の持ち方、他人とのかかわり方を学ばなけれはいけません。でも、本来素直な性格なので、きちんと説明すれば理解して、対人関係のルールを学んでいきました。彼は、その会社で正社員になりました。
私も彼の働きぶりを見に行きましたが、全く別人のようでした。仕事次第で人はこんなに変わるのだということを彼は私に教えてくれました。