私(Kumiko)が社会人になって初めて配属された部署は、新人があまり行かないようなところでした。一番年が近いのが10年以上先輩の係長で、あとはもっと年上の大先輩ばかりでした。そのような職場環境が、私にはとてもあっていました。最初は同年代の人がいないことに少し寂しさを覚えましたが、1か月もすれば優しい上司たちに囲まれて、私はのびのびと成長していきました。
長女で、しかもいとこの中でも一番年上の私は、いつも人の面倒を見る立場でした。それがあたりまでと思って育ちました。この時、生まれて初めて人に甘えるということを学びました。どれだけしっかり者でも、頑張って背伸びしても大先輩たちにはかないません。(笑)いろんなことをやさしく教えてくれました。
課長は、私を娘のようにかわいがってくれました。右も左もわからなかった私にも、他の人と同じように接し、すべての情報を共有してくれました。(これが普通じゃなかったのだということに気づくのは、2年後に始めて移動で違う部署に行ったときでした。)最初は、分からない用語が飛び交い、分厚い資料に目を通しても半分もわからず、少しパニックになりそうになりましたが、1年もたたないうちに、何となく全体の流れ(動き)がわかってくるようになりました。係長が出張に出かけるときは、必ず私を同行させました。「留守番しておいてあげるから、一緒に行っておいで。」と言って。普通、若い女の子が行くような場所でなかったので、目立ってしまうこともしばしば。当時は、「なぜ私だけ?」と思っていましたが、今になって思えば、課長は私の本質(性格)を見抜いていたのかもしれません。
係長は、私(Kumiko)にとってお兄さんのような存在でした。質問攻めにする私を嫌がらずに、いつも連れて歩いてくれました。出張するときには、必ずついて行きました。あまり社交的なタイプの人ではなかったのですが、私にはたくさんのことを教えてくれました。職場でもちょっと有名な名コンビだったみたいです。(笑)
もう一度一緒に仕事がしたい、ずっとそう思っていましたが、私よりも先に、退職してしまいました。あまりにも急なニュースに驚きましたが、その後、好きな仕事に就けたと噂で聞きいて安心しました。いつか、同窓会ができたらうれしいなって思います。
1年目にして、会計検査の受検を経験しました。周りの緊張感に圧倒されて、昼食がのどに通らなかったのを覚えています。
係長と二人並んで、検査官の前に座りました。検査官の質問に答え、応対する役です。後ろには、5〜6人の職員が控え、心配そうに見守っています。その視線を感じながら、とっても緊張していたのですが、周りの目にはとても冷静に映ったみたいです。「なんで偉い人たちが後ろで見ていて、新人の私がこんなに重役を務めているの?」と思いましたが、事前準備の甲斐もあり、最後まで無事務め終えることができました。「指摘事項なし」のコメントをいただいた時、所長がホッとしたようなとてもうれしそうな顔をしていたのが、印象に残っています。
終わってから、「紅一点だった。」とか、「1年目で会計検査を受検する人は初めて見た。」とか、いろいろと冷やかされました。何も知らなかった私は、ただ課長に言われるまま、素直にやっただけなの、に…。
知らないというのは、時としていいことだと思います。知らないからこそ、自分らしくのびのびと仕事をすることができました。知っていたら、自分で制限を設けていたかもしれません。
課長も係長も、私に制限を設けませんでした。何でもやらしてくれました。私の疑問に付き合ってくれ、問題解決の方法を教えてくれました。(たぶん、かなり生意気な子だったと思います。)
彼らのおかげで、私はのびのびと育ち、1年で周りが目を見張る成長を遂げました。当時はそれが普通だと思っていました。その時の上司のありがたみを知ったのは、それから何年か経ってからのことでした。今でもよい上司に恵まれたこと、感謝しています。